ミルフィオーレ基地襲撃。
    物々しい作戦名な分、ひと段落ついたときには皆がみんな、傷を負っていた。
    大小さまざまなそれは再会のよろこび以上に綱吉の胸をきつく締め付け。特に固く瞳を閉じたままベッドへと横たわった山本の姿は震えるほどの不安をもたらした。
    幸いにもほどなくして彼は目を覚ましてくれたけれども。

    「……………」
    「ん?どーした?ツナ?」

    綱吉の視線を感じて振り返った山本の顔に浮かぶのは、今も笑顔。首を傾げる角度さえも平時とまるで変わりない。
    それこそが綱吉が尊敬を抱く山本の姿ではあるのだが。

    「? ツナ?」

    答えぬ己にふしぎそうに歩み寄る。その距離すらも変わらないということが、なおのこと綱吉の心を揺さぶる。
    今日、自分たちは並盛の町へとくり出したのだ。
    綱吉がハルの家に赴くためのその時間、山本はランボたちと遊んでいてくれて。
    それで帰っていなくても、住んでいた家へ思い馳せなかったはずはないのだ。
    いなくなったという父親と住んだその場所に。

    なのに、山本は感情のほつれひとつ見せない。
    幻騎士によって受けた傷と同じように、一人で片づけてしまう。
    それが、綱吉にはもどかしくてたまらないのだ。

    指輪戦のときに『山本なら何とかしてくれそうな気がする』と言ったことがある。その頼り強さが今、どうにも苦しくて仕方がなかった。


    甘えてばかりだった自分が、甘えてほしいなんて
    なんて我がまま




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