閉じた闇に人は安堵を覚えるのだ、と。
誰かは語っていたかもしれぬが、あいにくと骸にはその心地が一片も理解できなかった。
瞼を開けて、映る世界すべてを把握していなければ呆気なく死んでしまうような、そんな場所にいたから。
およそ200度ほどの、明朗な視界。
数多の情報を得、分析し、然るべき行動へと繋げる。その手段。
目を閉じて何もかもを曖昧にするなんて、冗談でもなかったのに。
なのに。
―――たった一発の弾が、彼を消したのだという。
その、現実が、
たった一つの、その存在が
骸に瞼を上げることを躊躇わせる。
“いない”という事実を認めたくない、と無様に足掻く。
「……滑稽だ」
吐き捨てる言葉の合間すら、目を閉じていたいなんて。
08.12.28UP