超直感を鍛える。
    そう先生さまが毎度のごとく唐突に提案した課題。
    自室でなじみの週刊誌を手にごろごろと怠惰をむさぼっていた綱吉は、傍から聞けばいかにも荒唐無稽なそのセリフにうんざりとした表情を浮かべた。
    が、それでもきちんとこなすつもりではあったのだ。
    リボーンが“課題”を指し示す、その時までは。




    「では、次。ボンゴレが敵対勢力の一員、ティオの弟はボンゴレの領地に手を出そうとしている」

    マルかバツか。なんてクイズ番組にも出そうな口上で述べられる光景に、綱吉は本日何度目かの目をそらしたくて堪らない衝動を抑える。
    いくらこの状況がありえないものであったとしても、ごつりと背に触れる固い感触
    ―――リボーン、お前、もうホントその口も手も速いとこどうにかしてくれよ…―――が、綱吉がドロップアウトするのを許さないからだ。
    十中八九の人間が“良い声”だというだろう問題の発生源をうろんに見上げれば、二色の瞳が答えを促すよう細められた。

    「…まる」
    「当たりです」

    にっこりと返された笑顔こそが真か。妙に機嫌のよい姿に頭痛すら覚えてしまいそうで。

    「………いつまで続けるんだ、骸…」
    「あなたの後ろにいる先生が満足するまで、ですかねえ」
    「グダグダ言ってんな、ツナ。オレが集中力を高めてやって、嘘つきのスペシャリストである骸が相手なんだ。何の不足もねえだろ?」

    トン、と背を押す力加減は至極軽いものとはいえ、握られるのは紛れもなくリボーンが愛銃。
    でもって当たっても外れても嬉しくない骸の真っ黒な問題とくれば、そのどこに文句をいうなと…。
    長々と説いてほしい疑問を飲み込むよう、綱吉は息を吐く。
    いつだって自分の周囲は理不尽にあふれているのだ。

    そうして、諦めのままにちっとも楽しくないクイズを重ねて。
    命も緊張感もしっかり握られていた綱吉は、
    だから

    「さて、今までの問題の中、正解は23問?」

    がらりと系統を変えたこの質問に、超モード近くまで張りつめていた気をつい、逸らされてしまったのだ。

    「は、え?にじゅう、さん??」
    「Passando il limite di tempo.時間切れです」

    ふ、と今日一番であろう顔で骸は笑って。不意に、距離をつめる。
    Un problema.
    そう、二度目のイタリア語が綱吉の耳をなでた。

    「六道骸は沢田綱吉を愛している?」

    その日、
    沢田綱吉は時間の概念すらぶっ飛ぶという稀有な体験を身にした。



    嘘か真かを見極めるエイプリル・フール。
    リボーンの課題は量を重ねて、いつの間にか時計の針はそろって頂点を超えようとしていた。




                                                                      09.04.01UP