雲雀恭弥。
    彼が気に食わぬものは星の数ほどあれど、消してしまいたいと心底から嫌っているのはその世界にたった一つだった。
    超直感。
    沢田綱吉が有す馬鹿らしい能力だ。
    意識下の本能よりも鋭い場所で察知するというそれは綱吉の視点をマフィアの王に相応しく、広く深めるのに貢献している。
    そう、赤ん坊は言っていた。常と変わらぬ皮肉めいた口元で。

    ―――馬鹿らしい。

    ならば何故、誰もが気付く簡単な場所にすら目を向けられぬのか。
    大空と冠される綱吉はその懐にありとあらゆるものを招く。―――照らし出す。だというのに、ただ一つ、その身にだけは向けられないのだ。

    馬鹿じゃないの。
    呟くヒバリは今日も綱吉へ非難を浴びせる。
    抉り、重ねるように冷たくあしらう。
    傷つかぬはずがないのだ。
    痛くないはずがない。そんな動物が持つ本能的な感覚すら麻痺している馬鹿で救いようのない男。

    綱吉はいつだって微笑を絶さない。

    ヒバリは今日もまた苛立ちのまま、言葉を紡いだ。





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